退去強制について
退去強制手続
入管法における退去強制は、退去強制事由に該当する外国人を国外に強制的に退去・送還する行政処分です。
これは、外国人の在留を否定し、国外に送還するという処分ですので、外国人を強制送還するという決定が下されるまでに、入国警備官の違反調査、収容令書による収容、入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決といった審査手続がなされます。
強制退去処分とすることが確定したとき、すなわち退去強制事由に該当する外国人であり、
①退去強制事由に該当するとの判断に異議の申し出をしなかったとき
②特別審査官による認定に関し異議の申し出をしなかったとき
③法務大臣の裁決で在留を許可する事情なしとの通知を受けたときには退去強制令書が発布されます。
退去強制される外国人はその国籍又は市民権の属する国に送還されるのが原則ですが、その国に送還することができない場合は、本人の希望により、本邦に入国する直前に居住していた国等その他の国に送還されることとなります。
また、入国者収容所長又は主任審査官が、退去強制令書の発布を受けた者が自らの負担により自ら本邦を退去することを許可する場合は、本国に送還することができる場合であっても、当該許可に係る申請に基づき、本国以外の受け入れ国を送還先として定めることができます。
なお、退去強制令書が発布され、不服がある場合には、再審情願を行うまたは、行政訴訟を提起することもきます。
退去強制手続の中で、法務省入国管理局による収容執行がされる場面は2回あります。
一つ目は収容令書による執行です。
入国警備官は、外国人が退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書により収容することができます。
収容令書は警備官の請求により主任審査官が発布します。
収容令書によって収容することができる期間は30日以内ですが、主任審査官がやむを得ない事由があると認める場合にはさらに30日間まで延長することができます。よって、収容令書により収容可能な期間は最長60日です。
二つ目は退去強制令書による執行です。
退去強制手続が進み、退去強制令書が発布された場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することが出来ないときは、入国警備官は、送還が可能となるときまで、その者を収容することができます。
収容令書とは異なり退去強制令書に基づく収容には期間の制限はありません。
収容令書又は退去強制令書による収容がされている場合において、外国人本人またはその代理人、配偶者、親族等は仮放免の申請をすることができます。
仮放免について詳しくは、別途記載の仮放免をご参照ください。
平成22年7月1日より新たな退去強制事由として、次のものが加わりました。
●他の外国人に不正に上陸許可等を受けさせる目的での、偽変造文書等の作成等を教唆・幇助する行為をしたこと
●不法就労助長行為をしたこと
●資格外活動の罪により禁錮以上の刑に処せられたこと
上記記載の退去強制自由のうち、不法就労助長行為は依然として多数存在し、特に外国の事業主が不法滞在者を不法に就労させて利益を得る事案が数多く見受けられるところ、従来は、不法滞在者は退去強制される一方で、不法滞在者を就労させて利益を得た外国人事業主は退去強制されないこととなっていました。
また、近時、悪質なブローカーが外国人の研修生を許可を受けていない機関にあっせんして就労させることが懸念されていました。
本改正は、それらに厳格に対処するため、不法就労助長行為が退去強制事由として加えられました。